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Bequeath

by 川上 幸生

古民家を残す意味。

私は20年前に大阪から移住して現在は愛媛県松山市に住んでいる。松山市の隣の陶芸の町「砥部町」に念「ずれば花ひらく」の詩で有名な坂村真民の記念館でがある。記念館には様々な詩があるが、その中でこの詩に出会った。

「あとから来る者のために」

あとから来る者のために

田畑を耕し

種を用意しておくのだ

山を

川を

海を

きれいにしておくのだ

ああ

あとから来る者のために

苦労をし

我慢をし

みなそれぞれの力を傾けるのだ

あとからあとから続いてくる

あの可愛い者たちのために

みなそれぞれ自分にできる

なにかをしてゆくのだ

坂村真民92歳の時の詩である。

古民家とは古い住居のことを指すが、それを保存する目的はまさにこの誌にあるように「あとからくる者のため」=「未来の子どもたちのため」に必要なことだと思っている。

古民家は現在、100年前は当たり前だった土間での作業や竈(かまど)での調理は不便で、木製建具の隙間風(すきまかぜ)は寒く、日の光が入らない暗い室内など現在の生活ではとても不便な建物であり、故に解体され処分されている。

しかし古民家こそが日本の住文化の原点であり、日本人の生活様式の原点である。

昔の職人が丹精(たんせい)を込め加工した柱などの製材(せいざい)された木材は貴重品で、家を建て替える際に何度も使い回された。そこには「ものを大事にする」循環型の考え方が根付いており、開放的な古民家の間取りは近隣との密接なコミュニティを形成し、地域で子どもの躾や教育などをおこない、「結(ゆい)」と呼ばれる地域扶助の日本文化の特徴である。

また四季折々の伝統的な行事は代々と地域で受け継がれ、その積み重ねこそが文化となる。

自然の前に無力だった昔の生活は逆に自然との一体感を生み、八百万の神(やおよろづのかみ)として回りの全てのものに感謝する精神性を育んだ。戦後高度経済成長時代にそれらは置き去りにされ、現在の住宅の平均耐用年数が約30年という使い捨ての「スクラップ アンド ビルド」の浪費文化が生まれた。経済が右肩上がりの時代であればそれでも良かったが、経済は成熟し、少子高齢化社会を向かえるこれからの時代、欧米に比べ遅れている住まいや住宅について学びなおす文化的な再成熟が必要である。その為に原点となる古民家を学ぶ必要があると確信している。

私が古民家にこだわる理由は、ノスタルジーに浸り、不便な生活を強いる古民家に住むことを押し付けることでなく、古民家に活かされた様々な先人達の知恵を学び、それを現代の生活に合わせて改修することを再築(さいちく)と定義し、持続可能な循環型の建築をおこなうことである。

具体的には、古民家を学び、そこに活かされた先人達の技や考え方を現代の住宅に取り入れて活用する。そうすることで、住宅の耐用年数の短さを解消し、少なくとも欧米諸国の住宅の平均耐用年数である100年程度は持続可能な住環境を提供する。また古民家を再活用することで無駄な資材の浪費を控えて地球温暖化防止にも貢献する。

そういう気概で仕事をしています。

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川上 幸生
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